「経管栄養=液体」という“過去の常識”にとらわれていませんか。 その発想を転換し、胃ろうの人の栄養管理 を固形化栄養に切り替えてみると、嘔吐や下痢、栄養剤リーク(漏れ)などの合併症が軽減できる場合もありま す。
人は食事をすると、食べたものを一定期間、胃の中に貯めておき、少しずつ 腸に送って栄養分を吸収します。そのため、食道と胃の間には噴門、胃と十二 指腸の間には幽門と呼ばれる門があり、食道への逆流を防ぎ、腸に送り出す量 の調節を行っています。
しかし、液体は流動性が高く、ほんの小さなすき間も通り抜けることができるので、 簡単に噴門、幽門から漏れ出てしまいます。胃ろうの人にしばしば起こる嘔吐や 下痢は、こうして漏れ出た栄養剤が原因である場合がみられます。
嘔吐は嚥下性肺炎の原因にもなります。また、胃ろうから栄養剤が漏れる栄養剤リ ークも流動性の高い液体栄養剤の場合、頻繁にみられる合併症です。
こうした合併症を防ぐために生まれたのが「栄養剤を固形化する」という考え方。 それを製品化したのが「固形化経腸栄養剤」です。
「固形化」といっても、単にトロミや粘りをつけた、いわゆる「半固形化栄養剤」とは“似て非なり”です。
栄養剤の固形化のため、以前は粉末寒天を使って調理していましたが、 最近、商品開発され、調理の手間なく利用できるようになりました。
「固形化経腸栄養剤」の定義は、「寒天などを使って栄養剤をゲル化 (流動性をなくして固形化)し、重力に抗してその形態を保つ固さとした経 管栄養剤」です。この定義を満たす市販の栄養剤は現在、「ハイネゼリー」 (大塚製薬工場社製)しかありません。
経腸栄養や流動食だけでは、1日に必要な水分量が不足することが知られています。 市販の固形化栄養剤を使用する場合も水分量には十分注意しましょう。ハイネゼリーを使用する場合に必要 な追加水分の選択法と追加する量の目安については、PDFをご参照ください。
次回は、固形化栄養に関するさまざまな疑問をQ&A形式で解説します。